私の一冊

無名の人生

渡辺京二 著

文藝春秋(文春新書)2014年8月刊

渡辺京二氏は、熊本で執筆活動を行い、『逝きし世の面影』『黒船前夜』『江戸という幻景』などの著作がある方です。京都で生まれ、その後北京、大連で過ごし、旧制中学3年の時に敗戦、着の身着のまま日本に帰ってこられたのですが、大連で多くの本を読みふけったことが一生の糧となったと生前に語っていました。読書量が半端ではなく、時には1日に3冊読むこともあり、また、驚くほどの記憶力の持ち主でした。

 本書はそんな著者の、序文「人間、死ぬから面白い」から始まる人生訓です。渡辺氏は2022年12月25日、庶民の目線で見た幕末史を執筆中に92歳で亡くなられましたが、氏の逝去後も版を重ねています。

3月4日は「バウムクーヘン」の日

3月4日は「バウムクーヘンの日」です。1919年の3月4日、広島県物産陳列館(後の原爆ドーム)で開催された展示卸売会で、ドイツ人のカール・ユーハイム氏によってバウムクーヘンが出品されたことが由来とされています。ドイツ語でバウムは木、クーヘンはケーキを意味し断面が年輪に見えることから、結婚式の引き出物や贈り物としても日本で広まっていきました。ドイツと日本では切り方が違うみたいで発祥の地ドイツでは、斜めに薄くそぎ切りにするのだそうです。切り方を変えて、日本の扇型や縦切りと食べ比べてみたいですね。

私の一冊

思考の整理学

外山滋比古 著

筑摩書房(ちくま文庫)1986年4月刊

 今までの教育は、いわばグライダー人間を作ってきた。指導者がいて目標が明確な時代では高く評価されたが、今後は自分で自由に飛び回る飛行機を作らなければならない。グライダーにどうエンジンを搭載するか。グライダー人間では、コンピューターという飛び抜けたグライダーに仕事を奪われる。

 思考は多くのチャンネルをくぐらせると良く、書いたものを声に出すとなお良い。『平家物語』が“頭がいい”のは偶然ではないという。

 最近、生成AIであいさつ文を作ってみた。瞬時に作成してくれるが、そのまま使おうとしてもすらすらと読めず、結局、自分で原稿を推敲する羽目になる。文章を自分の中で“発酵”させた言葉にしないとダメだと実感する。著者はこれを、情報の“メタ化”と表現している。

「褒める」ということ

 人は本能的に自分を褒めず、マイナスの部分を見てしまう生き物です。そうした心の視野を広げ、物事や人のプラス部分に光を当てることが「褒める」こと。相手を褒めるためには、まずは自分自身を認めて自分を満たしましょう。「褒める」達人になれば、会社の業績向上、離職率低下、人間関係の良好化へとつながります。

 褒めると叱るには共に相手の成長を願う「愛」があります。愛があればどう伝えてもいいのでなく、大切なのは、日頃からの関係性。日常、どれだけ相手のいい所を見つけ伝えているか。「褒め貯金」がどれだけあるか。ルールを破ったり、リスクを考えたり、叱る必要がある時に「叱る」。その後、どれだけ改善したか、伝えて褒める。叱りは褒めるで完結することが肝要。

 叱る時、怒鳴る人がいます。人間の脳は、怒鳴られると防衛本能が働き、パニックに陥り、じっくり考えたり物事を理解したりする能力が極端に減ります。指導したい、伝えたいことがあっても、怒鳴れば相手の頭に入らない。科学的にも怒鳴る指導は良くないと証明されています。ミスをした人には、傾聴と共感が大切です。相手の心の扉を開いた上で、「次はこうしたらどうか」を伝え、一緒に考える。聞き上手のポイントは、目を見る、うなずく、相づちを打つ、繰り返す、メモを取る、要約する。そして大事なのが笑顔です。

 上司が部下を叱る時、上司の6割以上が数分以内に気持ちを切り替えるのに、叱られた側の20%以上は1年以上引きずるというデータがあります。マイナスな言葉は周囲の人も不快にさせ、悪い印象を与え、人間関係が悪化します。何げなく口にした言葉も、積もり積もればその人の品性となります。例えば仕事終わりに「疲れた」ではなく「頑張った」なるべくプラスの言葉を使うこと。異なる意見には「そう来るか」、相手に直してほしい場合は「惜しい」。まずは「すごい」「さすが」「素晴らしい」と褒め、後はそこから考えましょう。

「ハッサク」

 2月が旬も果物の一つに、「ハッサク」があります。漢字で書くと「八朔」で、旧暦の8月1日を意味しています。冬と夏、真逆の季節なのに何故なのでしょうか?ハッサクの歴史は、1860年頃に広島県因島にあるお寺の住職の生家で原木が発見されたことが始まりだそうです。その住職が、「八月朔日(八朔)の頃から食べられる」と言ったことから「八朔」となったとされています。酸味と少しの苦味が特有のハッサク。そのまま食べられるのはもちろん、ゼリーやジャムなどにアレンジしたりして食べるのも楽しそうですね。

私の一冊

「人を動かす」改定文庫版

D/カーネギー 著

山口 博 訳

創元社 2023年9月刊

 社会人になり、人に動いてもらうことの難しさに直面していた時に、この本に出合いました。本書を読んで初めて理解できた気がします。それ以来、この本の内容を自分なりに実践してきましたが、会長という職務を全うするに当たり、基本に立ち戻り、常に意識していきたいと考えています。

 原書が発行されたのは1936年。87年前の本ですが、その内容は今も、そして今後も通用する真理なのではないかと思います。全ての人間関係において大切なことが書かれていますので、人間関係に悩んでいる方にお薦めしたい一冊です。

私の一冊

世界史で学べ!地政学

茂木 誠 著

祥伝社黄金文庫 2019年4月刊

 このところちょくちょく耳にするようになった「地政学」について、歴史の動きに合わせて分かりやすく書かれた一冊。ランドパワーとシーパワー国家による覇権争いの歴史や、ヨーロッパ、中東、アジア、アフリカなど各地域で起こる争いが、どのようなパワーバランスの下起こっているのか。歴史の教科書だけでは知り得ないことが「なるほど、こういうことか」と理解できます。

 発刊後4年以上がたちますが、その段階で現代日本を取り巻く環境や、ウクライナの現状を予見したかのような記述には、今読むと驚かれされるばかり。読むとこの先、世界がどのように動いていくのか、想像を膨らませてしまうような内容です。地政学に少しでも興味があるならば手に取って損はない一冊だと思います。

2024年の干支

2024年の干支 辰(たつ)は空想上の生き物(竜・龍)に例えられ「力強さ」や「成功」を象徴することから、新たな始まりやチャンスの年とされています。

天高く昇る龍のように志を高く持ち、より一層お役に立てる製品・サービスをお届けできるよう努めてまいります。

皆様のご多幸をお祈り申し上げますとともに、本年も倍旧のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。

私の一冊

山岸 忍 著

文藝春秋 2023年4月刊

「負けへんで!」

東証一部上場企業社長VS地検特捜部

 東証一部上場企業の㈱プレサンスコーポレーションの創業者で、代表取締役であった山岸忍さん。大阪地検特捜部に業務上横領罪の嫌疑で逮捕・起訴されたが、無罪判決が確定した。その事件についての、詳細な手記である。

 248日間にも及ぶ勾留生活の苦しさ、無罪判決を得るまでの心の動き、代表取締役を辞任し、プレサンス社の株式を売却せざるを得なくなった状況が記され、冤罪の恐ろしさがよく分かる。

 また、思い描いた構図を修正することなく突き進み、客観的証拠の検討を怠って関係者に対して無理な取り調べをした特捜部。そこからは、組織が陥りやすい問題として学ぶところが多く、経営者にとって示唆に富む一冊である。

12月22日は冬至

12月22日は冬至です。太陽の位置が最も低くなる日で、北半球では、一年間で最も昼が短く夜は長くなるのだそうです。冬至といえば柚子湯の印象が強いですが、「冬至の七種(ななくさ)」と呼ばれる食材があるのをご存知でしょうか。「なんきん(かぼちゃ)・れんこん・にんじん・ぎんなん・きんかん・かんてん・うんどん(うどん)」の7つで、すべて「ん」が2つ付いていて、食べることでたくさんの運が呼び込めると言われています。今年は冬至「冬至の七種」を食べて運をつけ、柚子湯に入り体を温めて、寒い冬を乗り切っていきましょう。