私の一冊

無名の人生

渡辺京二 著

文藝春秋(文春新書)2014年8月刊

渡辺京二氏は、熊本で執筆活動を行い、『逝きし世の面影』『黒船前夜』『江戸という幻景』などの著作がある方です。京都で生まれ、その後北京、大連で過ごし、旧制中学3年の時に敗戦、着の身着のまま日本に帰ってこられたのですが、大連で多くの本を読みふけったことが一生の糧となったと生前に語っていました。読書量が半端ではなく、時には1日に3冊読むこともあり、また、驚くほどの記憶力の持ち主でした。

 本書はそんな著者の、序文「人間、死ぬから面白い」から始まる人生訓です。渡辺氏は2022年12月25日、庶民の目線で見た幕末史を執筆中に92歳で亡くなられましたが、氏の逝去後も版を重ねています。