私の一冊

裁判官も人である

良心と組織の狭間で

岩瀬達哉 著 講談社 2020年1月刊

 本書を読むと、わが国の司法制度に対し、暗澹たる気分になるかもしれない。それでも推薦するのは、司法をより良い制度にするためにはまず実態を知らねばならず、その上でこの本は避けて通れないと確信するからだ。

 世の中にはさまざまな組織があり、それぞれに必ず陰陽がある。司法界も例外ではない。特別に見える司法界も人間の集まりであり、官僚組織の一形態である。その判決に喝采を浴びる日もあれば、怨嗟が渦巻く日もある。そもそも自由意志の下で、これが最善であるとの本心が投影されたものなのか。本書を読むと、そうではない場合が多々あるとしか思えない。

 最後に帯の言葉を引用して締めたい。「あなたに人が裁けるか?」