私の一冊

牧野富太郎 著

KADOKAWA(角川ソフィア文庫)2022年6月刊

「草木とともに」牧野富太郎自伝

 書店でNHK連続テレビ小説「らんまん」で話題の植物学者・牧野富太郎氏の自伝を目にした。氏は幕末の土佐に生まれ、小学校中退ながらも独学で植物学を修め、『牧野日本植物図鑑』など多くの著書を残し、94歳の天寿を全う。後に文化勲章も授与されている。

 自伝からは学者としての探求心がひしひしと伝わってくる。関東大震災の体験談や、間違っていると思えば学会の重鎮にも歯に衣着せず意見するなど、驚嘆の連続。「植物は人間がいなくても、少しも構わずに生活することができるが、人間は植物がなくては一日も生活することができない」との一文は、人類も地球上の生物の一つに過ぎない、人類よおごるなかれと諭し、SDGs達成には程遠い今のわれわれの生活様式に警鐘を鳴らしている、と捉えたい。