私の一冊

オシムの言葉

木村元彦 著

集英社(集英社文庫)2008年5月刊

 「リスクを冒して攻める。その方がいい人生だと思いませんか?」

 弱小チームを再生させ、日本代表チームを率いたイビツァ・オシム氏。

 1989年のベルリンの壁崩壊に続く、旧ユーゴスラビア共和国(現在は北マケドニア共和国)での民族主義の高揚、やがて残酷な内戦勃発、家族離散などに遭遇しながら、ユーゴ代表監督まで務めたオシム氏のサッカー魂に見事に触れ、火花を散らすような取材が結実したのが本書『オシムの言葉』であった。

 「平和日本」とは対極にある分裂・分団の世界を、サッカーを捨てることなく、サッカーと共に生き抜いたオシム氏の存在感、あわ立つような臨場感が、この本にあふれている。