私の一冊

アンドレアス・レダー 著、

板橋拓己 訳/岩波書店(岩波新書)2020年9月刊

ドイツ統一

 1989年11月のベルリンの壁崩壊、その後怒涛のような流れで成し遂げられた翌年10月のドイツ統一からはや31年。本書は壁崩壊から統一に至る歴史的な大事件を、重要な史実を網羅し、複雑な国際情勢に触れつつ包括的に整理した現代史テキストとしての好著である。翻訳も分かりやすく、新書の形で手に取りやすいことも読者にはありがたい。

 ドイツ統一は冷戦や東西分断の「終わり」を象徴するだけでなく、現代の「始まり」に位置する出来事でもある、と訳者は述べているが、言い得て妙である。また、ゴルバチョフがどのような世界観・大局観でドイツ統一にゴーサインを出したのかに以前から興味があったが、現状分析能力に欠ける理想主義者といった著者の辛口なゴルバチョフ評は印象に残った。