私の一冊

風塵抄

司馬遼太郎 著

中央公論新社(中公文庫)1994年7月刊

 司馬遼太郎による1986~96年の産経新聞朝刊の連載をまとめたもので、初版は91年。現在は文庫2冊にまとまって発売されています。64(『風塵抄二』と合わせると126)の事象についての短編随想集です。

 著者は「あとがき」で、風塵とは世間のこと、風塵抄とは小間切れの世間ばなしと解してもらえればありがたい。と題を説明した上でこう述べます。「ただ心掛けとしては、風塵のなかにあって恒心について書こうとしている。恒とはいうまでもなく、つね、あるいはかわらぬもの、ということで、恒心とはすなおで不動のものという意味である。ひとびとに恒心がなければ、社会はくずれる」

 現在の世界情勢を透視し言い当てているような、慧眼を感じずにはいられません。名著です。