渋沢栄一より学ぶ

 私たち凡人は、志を立てる際、何かと迷いがちですが、目の前の社会のムードに流されたり、周囲の事情に影響されたりして、自分の本領でもない方向へうっかり乗り出すべきではありません。それは、真の立志ではありません。

 まず、長所と短所をきちんと自覚し、自分が最も優れていると思うところへ向かって目標を設定すること。それと同時に、自分が置かれている環境でそれを実現できるかどうかの判断も必要です。

 どんな人でも日々ささやかな願望が生れてくるものです。例えば「〇〇がほしい」「〇〇さんのようになりたい」なども立志の一つで、私はこれを小さな立志と呼んでいます。生き方の根本となる志を立てたら、枝葉になる小さな立志を叶えるための努力も必要です。日常的に湧き上がる期待や願望を叶えるためには何をするべきかを常に考えるようにしましょう。しかし、小さな立志はちょっとしたことで変わりやすいため、それによって大きな立志がぶれないようにすることが大切です。つまり、大なる立志と小さい立志とが矛盾するようなことがあってはならないということです。

渋沢栄一「大小の目標を矛盾させない」(「立志と学問」の章より)