相続税の税務調査

 税務署による相続税調査は多くの場合、相続税の申告があってから1~2年後に実施されます。通常、亡くなった方の自宅に調査担当者が出向き、該当者の趣味や生活ぶりについて簡単に質問し、その後申告書に記載のない高価な絵画や書画、骨董などがないか、全ての部屋を調べます。見られたくない部屋を無理に調査されることはありませんが、強硬に断ると強制調査に入られてしまう可能性があります。

 税務署の事前調査のポイントは、該当者の過去の所得と、今回提出された相続税申告書の内容とのバランスが取れているか。また、該当者だけでなく、相続人である親族全員の銀行預金を過去にさかのぼって調べており、贈与税の課税対象となる。親族間で不透明な資金移動がないか、該当者が過去の相続で多くの財産が今回の相続税申告に正しく反映されているか、などです。

 事例として以前、90歳の女性が亡くなる15年ほど前、約5年間で2億円近くを現金で出金していた、と調査担当者から指摘されたことがありました。税務署は、該当者の預金の動きを10年以上さかのぼって調べているのです。この出金で高価な買い物をしていたとしたら、当然相続財産として申告対象となり、現金で保有していたなら、それも相続税の申告に計上されるべき、というのが税務署の主張です。

 また、家族が介護施設などに入所すると、生活費などのために、配偶者や子がキャッシュカードでその人の口座から出金を繰り返すことがあります。こうした出金も資金使途を明らかにできる資料として保存しておきましょう。税務署に対しても必要ですが、他の親族についても出金内容の透明性は大切。相続税調査の対応には、不透明な入出金をできるだけ少なくし、内容を説明できるようにしておくことが大事です。