私の一冊

月夜の森の梟

小池真理子 著 朝日新聞出版 2021年11月刊

 夫婦そろって小説家の小池真理子さんは、夫の藤田宜永さんとは、世間から「おしどり夫婦」と呼ばれることが多かった。一昨年、37年間連れ添った藤田さんが、がん闘病の末先立たれた。亡くなる直前に藤田さんは、「年をとったおまえを見たかった。見られないとわかると残念だな」と語った。

 梟の初鳴き。空には満月。現実感が遠のく。作家同士、何百年も一緒にいたような気がする。夫と出会った時、初めて確かめた言葉に「子どもは作らない、従って婚姻届も出す必要がない」ということであり、互いに「小池」「藤田」で呼び合った。

 夫の病と死に向き合った小池さんによるこのエッセー集を読んで、夫婦愛の絆の強さとその表現に感動させられました。