私の一冊

予測不能の時代

データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ

矢野和男 著

草思社 2021年5月刊

 日立製作所フェローの著者がテクノロジーを使って人間行動に関する大量のデータを調べた結果、生産性を上げるには信頼される「幸せ」な組織をつくることだと結論付ける。そして、その「幸せ」な集団は、組織内のつながりや均等で特定の人に集中せず、5分程度の短い会話が多く行われ、会話中に相手の話に同調して身体がよく動き、発言権が平等で偏りのない状態である、と分類する。

 今は予測不能の時代である。この予測不能な変化を好機として捉えることを著者は勧める。その手法は変化の特徴に合わせた向き合い方をすることで、実はこれが「幸せ」の本質なのだという。近年、心理的安全性という概念がしばしば議論されるようになった。本書はその概念を「幸せ」という切り口で捉えているともいえよう。