私の一冊

杉山慎 著

中央公論新社(中央新書) 2021年11月刊

「南極の氷に何が起きているか」気候変動と氷床の科学

 南極の氷床(大陸全体を覆う氷河)の面積は日本の約40倍。地球最大の氷の塊である。厚さは平均2000メートル、4000メートル超の場所もある。南極の氷が完全に融解して、海水準(陸地に対する海水面の高さ)が50メートル上昇したとすると、日本の国土の17%が海に沈むという。北海道は東西で二つの島に分かれるらしい。

 氷床変動を引き起こす最大の原因は氷床の融解である。そこには大気の温暖化を背景とする海水の温暖化と、偏西風の影響がある。20世紀以降に生じた10数センチメートルの海水準上昇でさえ、小さな島国や標高の低い国土を抱える国々に深刻な影響を与えている。

 昨年のノーベル物理学賞は、気候変動研究者の一人・眞鍋淑郎先生が受賞した。杉山氏は海水の温暖化という、人類にとって重要な問題を詳説している。