私の一冊

人新世の「資本論」

斎藤幸平 著

集英社(集英社新書)2020年9月刊

 「マルクス」というと、共産党による一党独裁制を連想する人も多いと思いますが、彼自身は「共産主義」「社会主義」という言葉をほとんど使っていません。最終的には「人々の自発的な相互扶助や連帯を基礎とした社会」を意図していました。1867年に『資本論』第1巻を刊行するも、研究と思索を深めつつ未完のまま亡くなりました。

 「人新世」は「人間の活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代」という概念。マルクスは資本主義的な経済成長で問題解決を図るのとは違う可能性を、最も体系的に追求した思想家の一人です。資本主義の強固なイデオロギーを打破し、今とは違う豊かな社会への想像力、構想力を取り戻すきっかけをつくりたいものです。危機の今に読みたい、常識を破る衝撃の名著です。