私の一冊

歴史のかげに美食あり 日本饗宴外交史

黒岩比佐子 著

講談社(講談社学術文庫)2018年2月刊

 人との交わりがある所に必ず会食あり、というのが人類の歴史です。私は、日本で最大級のおもてなしである宮中晩さん会が開かれる度に、その出席者やスピーチの内容はもちろんですが、特にメニューに注目してきました。

 では、近代国家として出発した明治時代の日本における饗宴は、どのようなメニューだったのでしょうか。本書は12種のメニューを用意しながら、幕末から明治までの、外国からの賓客のもてなしに苦心してきた日本外交の足跡を振り返っています。

 特に、明治の元勲・伊藤博文が愛した下関のふぐのフルコースの章は圧巻です。コロナ禍の中、会食の機会が持てるようになることを祈って、本書に乾杯です。